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ママンよりあなたへ…


by fuku_mama
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うそつきのはじまり

トッコちゃんの父親は鍛冶職人だ。
自宅の土間で、コークスを炊いて火をおこし鉄の棒を焼く。
真っ赤になった鉄の棒を、カーンカンカンカンカンっと専用のハンマーでたたいて
先を尖らしていく。両方尖らした鉄の棒を奥さんであるばーばが、大きなプレス機械をつかってコの字にまげて製品にする。
家の柱と柱をささえる大切な釘だ。
夏の酷暑の時期は除き、いつでも土間にはコークスが焼かれていた。
土間をあがるとみんなが食事をする6畳ほどの部屋があって、その奥が台所。
階段を上がるとひろい12畳くらいの細長い部屋があって、お泊まりのときは
そこに寝泊まりさせてもらった。二階はじーちゃんとトッコちゃんチーちゃんミーちゃんが寝るようになっていて、手前側の部屋にはオルガンや勉強机があった。
勉強机はふたつあって、片方がトッコちゃん。もう片方はチーちゃん。ミーちゃんはまだ小学生だったので折りたたみのおぜんをつかっていた。
昭和30年代後半から40年代にかけて、普通に見られる下町の光景だ。
ちなみにチーちゃんとはトッコちゃんのすぐ下の妹。ミーちゃんは末の妹である。

初めてあった時のこの3人の印象は、小さい私にはこうみえた。
すぐに怒るトッコちゃん。 いいたい事いうチーちゃん。
やさしいミーちゃん。
ミーちゃんは一番ばーばに性格が似ていて、上の二人にやいのやいのいわれる
わたしにそっとやさしくしてくれた。

私が一度しばらく北海道に預けられて、母の実家のチーちゃんやトッコちゃんと年の変わらない伯母さんたちと涙の別れをして東京に帰ってきていきなり事件は起きた。
わたしが実母の妹から贈られたペンダントをみて、トッコちゃんが
「私のペンダントをあけみが盗んだ」といってみんながいる夕食のときに返せときた。
わたしは、これは秀子おばちゃんにもらったものだといっても、きいてもらえず
それはトッコちゃんの手に渡った。
ほんとはほんとは渡したくなかったけれど、その頃わたしは子供ながらに自分の立場がわかっていた。お世話になるところでかわいがってもらうにはどう動いたらいいかを。
たとえ自分が正しくても、その家にいる時はその家の人をたてること。
そうしないと、困るのはただ一人しかいない肉親のお父さんであると。

紫のペンダントはトッコちゃんがいうには、わたしの父からもらったということだった

なら・・きっと大切にしてくれるんだろうな。

そう思ってペンダントを差し出した。トッコちゃんはペンダントを手にして
「うそつき!!」
と吐き捨てた。それを見ていたチーちゃんもうそつきうそつきとはやしたてた。

もーなんでもいいや。私の事は私がわかればいいんだもん。
ごめんね。ひでこおばちゃん・・・・

わたしはその夜、お布団の中に潜って自分の心を飲み込んだ。
5才の春の事だった。
by fuku_mama | 2008-12-01 14:45 | ママン日記